学研全訳古語辞典 |
わろ・し 【悪し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
よくない。好ましくない。感心できない。
出典枕草子 ふと心おとりとかするものは
「男も女も、ことばの文字いやしうつかひたるこそ、よろづのことよりまさりてわろけれ」
[訳] 男でも女でも、言葉遣いを下品につかったのは、どんなことにもまして好ましくない。
②
見栄えがしない。見劣りがする。みっともない。美しくない。
出典枕草子 春はあけぼの
「昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶(ひをけ)の火も白き灰がちになりてわろし」
[訳] 昼になって、だんだん生暖かく、(寒さが)やわらいでいくと、丸火鉢の炭火も白い灰が目立つ状態になって、みっともない。
③
下手だ。つたない。上手でない。
出典宇治拾遺 三・六
「年ごろはわろく描きけるものかな」
[訳] 長年の間、(絵を)下手に描いていたものだなあ。
④
貧しい。
出典大和物語 一四八
「年ごろ渡らひなどもいとわろくなりて」
[訳] 数年来暮らし向きなどもたいそう貧しくなって。
参考
中古から中世にかけては「わろし」の対義語は「よろし」、「あし」の対義語は「よし」であるととらえてよい。
語の歴史
「あし」は奈良時代から用いられているが、「わろし」は平安時代に入ってから例が見いだされる。「わろし」から転じた「わるし」は、平安時代から並行して現れるが、やがて「あし」「わろし」の両者を吸収する形で現代語へと続いていく。
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