学研全訳古語辞典 |
きみをおきて…
分類和歌
「君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ」
出典古今集 東歌・よみ人知らず
[訳] 君を忘れて浮気心を私が持ったとしたら、あの波の越えるはずのない
「末の松山」
を、波もきっと越えてしまうだろう。(そんなことはあり得ない。)
鑑賞
「末の松山」は陸奥(むつ)の国、今の宮城県多賀城市付近にあったという山のことで、歌枕(うたまくら)の一つである。これを波が越えるというのは、あり得ないことが起こる比喩(ひゆ)、または、心変わりを表す。恋人に対して、変わらぬ誠実を誓った民謡調の歌である。「持たば」は「持つ」の未然形に接続助詞の「ば」が付いたもの、「もし、持っていたら」と訳す。「越えなむ」は「越ゆ」の連用形に、確述(強意)の助動詞「ぬ」の未然形と推量の助動詞「む」が付いたもの。「きっと…だろう」と訳す。
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