学研全訳古語辞典 |
うつ・る 【映る・写る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
(光や影などが)映る。写る。
出典土佐日記 二・一一
「ある人、この柳の影の、川の底にうつれるを見て」
[訳] ある人が、この柳の影が川の底に映っているのを見て。
②
よく似合う。ぴったりする。
出典浮世床 滑稽
「お千代はお千代らしい年倍(ねんぱい)の役者でなければうつらぬ」
[訳] お千代はお千代にふさわしい年齢の役者でなければぴったりしない。
うつ・る 【移る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
動く。移動する。転居する。
出典更級日記 かどで
「九月(ながつき)三日門出して、いまたちといふ所にうつる」
[訳] 九月三日に(上京に先だって)門出をして、いまたちという所へ移動する。
②
(色が)あせる。さめる。変色する。
出典古今集 春下
「花の色はうつりにけりないたづらにわが身(み)世(よ)にふるながめせし間(ま)に」
[訳] ⇒はなのいろは…。
③
時が過ぎる。時とともに変化する。
出典徒然草 一五五
「生・老・病・死のうつり来たること、またこれに過ぎたり」
[訳] 生まれること、年老いること、病むこと、死ぬことが時とともに変化し巡り来ることは、またこの自然界の変化以上に早いのである。
④
しみつく。染まる。
出典枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ
「裳(も)・唐衣(からぎぬ)に白いものうつりて」
[訳] 裳や唐衣におしろいがしみついて。
⑤
変わる。変化する。
出典徒然草 八五
「この人は下愚(かぐ)の性、うつるべからず」
[訳] この人は非常に愚かな性格で、(賢く)変わることができない。
⑥
転任する。異動する。
出典大鏡 良房
「貞観(ぢやうぐわん)八年に、関白にうつり給(たま)ふ」
[訳] (藤原良房(ふじわらのよしふさ)は)貞観八年に、関白に転任しなさる。
⑦
(物の怪(け)が)のりうつる。
出典源氏物語 葵
「人にさらにうつらず」
[訳] (物の怪(け)などが)よりまし(=一時的に物の怪や霊をのりうつらせる子供や人形)に決してのりうつらないで。
⑧
(葉・花などが)散る。
出典新古今集 春下
「今日だにも庭を盛りとうつる花」
[訳] せめて今日だけでも、庭の上が花盛りであるかのように散る花よ。
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