学研全訳古語辞典 |
うと・し 【疎し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
疎遠だ。親しくない。関係がうすい。
出典伊勢物語 四四
「うとき人にしあらざりければ、家刀自(いへとうじ)さかづきささせて」
[訳] 疎遠な人でもなかったので、(その家の)主婦が杯をすすめさせて。
②
よそよそしい。わずらわしい。うとましい。
出典古今集 雑上
「かつ見れどうとくもあるかな月影のいたらぬ里もあらじと思へば」
[訳] 月を美しいと思いながらも一方では、どこかよそよそしく感じられるよ。月が照らしていないところなどないと思うと。
③
よく知らない。不案内だ。
出典徒然草 八〇
「人ごとに、わが身にうときことをのみぞ好める」
[訳] だれでも、自分がよく知らないことばかり好んでいる。
④
無関心だ。
出典徒然草 四
「後の世の事、心に忘れず、仏の道うとからぬ、心にくし」
[訳] 来世のことをいつも心に忘れず、仏の教えに無関心でないのが、奥ゆかしい。
⑤
よくきかない。鈍い。
出典落窪物語 二
「大臣(おとど)おし放ち引き寄せて見給(たま)へど、え目うとくて見給はで」
[訳] 大臣は(手紙を)離したり、近づけたりして見ていらっしゃるが、目がよくきかないのでご覧になることができなくて。
参考
現代語「うとい」は③の意味だが、古文では①②の意味が多い。
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