学研全訳古語辞典 |
さ-しも
①
あんなにも。そんなにも。それほど。
出典方丈記
「人の営み、みな愚かなる中に、さしも危(あや)ふき京中(きやうちゆう)の家を造るとて、宝を費やし、心を悩ますことは」
[訳] 人間のやることがすべてばかげている中で、あんなにも危険な都の中の家を建てるといって、財産を浪費し、神経をすりへらすことは。
②
〔下に打消・反語の表現を伴って〕それほどには。そのようには。そうとばかり。たいして。
出典源氏物語 玉鬘
「筑紫人(つくしびと)は三日籠(こも)らむと心ざし給(たま)へり。右近(うこん)はさしも思はざりけれど」
[訳] 筑紫の人は(寺に)三日籠ろうとお決めになっていた。(侍女の)右近はそれほどには思わなかったけれど。◆副詞「さ」に、副助詞「しも」が付いて一語化したもの。
さしも
《接続》四段・ナ変以外の動詞の未然形に付く。
活用{さしも/さしも/さしも/さしも/さしめ/さしめ}
〔尊敬〕…なさる。
出典史記抄
「景帝は孝景の七年に生じさしもたぞ」
[訳] 景帝は孝景の七年に生まれなさったのだ。◆中世語。
参考
助動詞「さす」の連用形「させ」に「たまふ」の付いた「させたまふ」が「さしまふ」を経てできた語。狂言では特に命令形の例が多い。
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