学研全訳古語辞典 |
信夫
分類地名
今の福島県北部をさした旧郡名。和歌では「忍ぶ」とかけて用いることが多い。
しの・ぶ 【偲ぶ】
活用{ば/び/ぶ/ぶ/べ/べ}
①
めでる。賞美する。
出典万葉集 一六
「黄葉(もみつ)をば取りてそしのふ」
[訳] 黄色く色づいた葉を手に取って賞美する。
②
思い出す。思い起こす。思い慕う。
出典徒然草 一三七
「浅茅(あさぢ)が宿に昔をしのぶこそ」
[訳] 茅(ちがや)が茂っている荒れた家に、(恋人と語らった)昔を思い出すことこそ。
活用{び/び/ぶ/ぶる/ぶれ/びよ}
思い起こす。思い慕う。
出典源氏物語 幻
「亡き人をしのぶる宵の村雨に」
[訳] 故人を思い起こす夜のにわか雨に。
しのぶ 【忍】
①
「忍草(しのぶぐさ)①」の略。
②
「忍草(しのぶぐさ)②」の略。
③
「忍摺(しのぶず)り」の略。
出典新古今集 恋一・伊勢物語一
「春日野の若紫の摺(す)り衣(ごろも)しのぶの乱れ限り知られず」
[訳] ⇒かすがののわかむらさきの…。
しの・ぶ 【忍ぶ】
活用{び/び/ぶ/ぶる/ぶれ/びよ}
①
こらえる。我慢する。
出典大和物語 一四九
「心地には、かぎりなく嫉(ねた)く心憂(こころう)しと思ふを、しのぶるになむありける」
[訳] 女は心の中ではこの上なくくやしくつらいと思っているのを、我慢しているのであった。
②
つつみかくす。秘密にする。
出典源氏物語 夕顔
「しのぶるやうこそはと、あながちにも問ひ出(い)で給(たま)はず」
[訳] (夕顔が素性をかくすのは)秘密にするわけが(あるのだろう)と、(源氏は)無理に聞き出そうとはなさらない。
活用{ば/び/ぶ/ぶ/べ/べ}
①
こらえる。我慢する。
出典源氏物語 須磨
「めでたう覚ゆるに、しのばれで」
[訳] 人々がすばらしいと感嘆するにつけても、(お供の人々は)悲しい思いをこらえられなくて。
②
人目を避ける。隠れ忍ぶ。
出典徒然草 三二
「わざとならぬ匂(にほ)ひ、しめやかにうちかをりて、しのびたるけはひ、いとものあはれなり」
[訳] わざわざ焚(た)いたとも思われない(香の)かおりが、もの静かに薫って、世間を避けて住んでいるようすがとても趣深い。
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