学研全訳古語辞典 |
わぎもこが…
分類和歌
「吾妹子が植ゑし梅の木見るごとに心むせつつ涙し流る」
出典万葉集 四五三・大伴旅人(おほとものたびと)
[訳] 我が妻が植えた梅の木を見るごとに、胸がいっぱいになり、涙が流れることだ。
鑑賞
我が家に帰着して、任地大宰府(だざいふ)で没した妻大伴郎女(いらつめ)をしのんで詠んだ歌。眼前の梅の木をながめても、これを植えた妻はもうここにはいない。妻を失った寂しさ、喪失感の深さを慟哭(どうこく)にも似た率直さで歌い上げる。「涙し」の「し」は強意の副助詞。
わぎもこが…
分類和歌
「吾妹子が見し鞆(とも)の浦(うら)のむろの木は常世(とこよ)にあれど見し人そなき」
出典万葉集 四四六・大伴旅人(おほとものたびと)
[訳] 私の妻が(往路で)目にした鞆の浦のむろの木は、今も変わらずにあるが、それを見た妻はもう今はいないことだ。
鑑賞
題詞によれば、作者が帰京の途次に詠んだ歌。行きには妻とともに目にした鞆の浦のむろの木を、帰路では一人で眺めなければならない悲しさを実感をこめて歌っている。「鞆の浦」は広島県福山市鞆町の海岸。「むろの木」は、ひのき科の「杜松(ねず)」とする説が有力。「常世に」は、いつまでも変わらずの意。
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