学研全訳古語辞典 |
い・づ 【出づ】
活用{で/で/づ/づる/づれ/でよ}
①
(中から外に)出る。
出典更級日記 後の頼み
「月もいでで闇(やみ)に暮れたるをばすてに」
[訳] 月も出ないで闇に沈んでいる姨捨山(おばすてやま)に。
②
でかける。出発する。
出典土佐日記 一二・二一
「住む館(たち)よりいでて、船に乗るべき所へ渡る」
[訳] 住んでいる官舎を出発して、船に乗ることになっている所へ移る。
③
のがれる。超越する。
出典徒然草 五八
「必ず生死(しやうじ)をいでんと思はんに」
[訳] どうしても生死にとらわれる境地を超越しようと思うならば。
④
(表に)現れる。発生する。
出典伊勢物語 九六
「身に瘡(かさ)も一つ二ついでたり」
[訳] 体にはれものも一つ二つ出てきた。
活用{で/で/づ/づる/づれ/でよ}
①
出す。現す。
出典古今集 春下
「花見れば心さへにぞ移りける色にはいでじ人もこそ知れ」
[訳] (移ろいやすい)花を見ると(花ばかりか)心までもが(ほかの人に)移っていってしまう。(その心を)顔には出すまい、人が知ったら大変だもの。
②
〔「言(こと)に出づ」の形で〕口に出す。
出典古今集 恋二
「言にいでて言はぬばかりぞ」
[訳] 口に出して言わないだけだよ。
活用{で/で/づ/づる/づれ/でよ}
〔動詞の連用形に付いて〕
①
…はじめる。
出典蜻蛉日記 下
「雨、降りいでぬ」
[訳] 雨が降りはじめた。
②
…だす。
出典徒然草 二一五
「台所の棚に、小土器(こかはらけ)に味噌(みそ)の少しつきたるを見いでて」
[訳] 台所の棚に、小さな素焼きの皿にみその少しくっついているのを見つけだして。
注意
古語の「いづ」には、現代語「でる」にはない他動詞の用法(「出す」の意)がある。
語の歴史
[一]の「いづ」の語頭の母音「い」が脱落した形が近世に下一段活用化して、現代語の「でる」になった。
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