学研全訳古語辞典 |
かすがのの…
分類和歌
「春日野の雪間(ゆきま)を分けて生ひ出(い)でくる草のはつかに見えし君はも」
出典古今集 恋一・壬生忠岑(みぶのただみね)
[訳] 春日野のまだ消え残る雪の間を分けて萌(も)え出てくる若草が、わずかに見えるように、ほんのわずかに見えた、あなたは、ああ。
鑑賞
「春日野の……生ひ出でくる草の」までが「はつかに見えし」の序詞(じよことば)。この序詞によって清らかで初々しい若い女性の姿が浮かび上がってくる。雪間から顔をのぞかせたばかりの若草の持つイメージが、垣間(かいま)見た女性の姿に重なるというすぐれた序になっている。
かすがのの…
分類和歌
「春日野の若紫の摺(す)り衣(ごろも)しのぶの乱れ限り知られず」
出典新古今集 恋一・在原業平(ありはらのなりひら)・伊勢物語一
[訳] 奈良の春日野の若い紫草で摺って染めた、しのぶ摺りの衣の模様が乱れているように、あなたへの思いで私の心の乱れはどこまで続くのか限りが知れません。
鑑賞
この歌は、元服直後の男が春日の里で、着ていたしのぶ摺りの狩衣(かりぎぬ)の裾(すそ)を切って書きつけて女に贈ったとされる。『新古今和歌集』には在原業平の作として載っており、「女に遣はしける」と詞書(ことばがき)がある。「春日野の……摺り衣」は「しのぶの乱れ」を導く序詞(じよことば)。「しのぶの乱れ」には、「しのぶ摺りの(模様の)乱れ」と「忍ぶ心の乱れ」とを掛ける。
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